用語解説-スポーツ・アスリート用-(追記:新型コロナウイルスとLPS)

リポポリサッカライド LPSとは

注意このページは特定の製品の効果効能を記載説明したものではなく、物質用語としてのLPSをスポーツや競技者を対象に解説をしたものです。

自然免疫を活性化する成分です(WADA世界アンチ・ドーピング規程 に準拠)

免疫とは:①外からの異物を認識し身体を守る②体内で発生、変異した細胞を分解除去する機能です。

免疫活性化のメカニズム:身体のいたるところにある免疫細胞には休止状態とすぐに働けるプライミング状態があり、常にプライミング状態にするには、免疫細胞のスイッチをONにする必要があります。LPSはTLR4Toll-likereceptor4という免疫スイッチを入れます。 

LPSの何が良いのか

①感染症予防:風邪をひきにくくなります。→粘膜や唾液の免疫グロブリン(IgAなど)を増やします。

②筋肉増強:筋トレで修復組み立てをします。→筋サテライト細胞やコラーゲンの産生に関わっています。

③皮膚&血管&末梢神経修復:元の組織どうりに修復します。→マクロファージのVEGF(血管内皮増殖因子)分泌など。

④花粉症の緩和:アレルギーを正常な状態に戻します。→Th1型のサイトカインとTh2型※1をバランスさせます。

⑤幸福感の向上:ランナーズハイな状況を生み出します→βエンドルフィンを誘導します。

⑥鎮痛効果:モルヒネの6.5倍と言われるβエンドルフィンで痛みを和らげます。

⑦ヘルペスの緩和:痛みが消失、軽減します。→βエンドルフィンを誘導します。

⑧メタボ対策:高脂血症対策が出来ます。→HDLを減らさずLDLのみをマクロファージが減らします。

⑨骨の強化:骨密度の低下を制御出来ます。→破骨細胞、骨芽細胞の代謝を活性化します。

⑩その他:美容効果、認知症予防、糖尿病、癌、胃潰瘍、モルヒネ中毒・・・多くのエビデンスが発表されています。

※1:リンパ球の一種でヘルパーT細胞のTh1細胞より、Th2細胞が優位に働いている状態では、IgE抗体産生が増加し、アレルギー体質に陥りやすいと考えられている。参考URL

今、製品化された理由

LPSは研究者の間では以前から話題になっていましたが、試薬レベルの高額成分しか流通していませんでした。それを国立大学医学部・薬学部と大学のチームで作った株式会社に国の経済産業局が支援し量産化が出来るようになった事で、高額ながら手の届く価格になった事が大きな理由です。

アスリートとしての活用範囲

「フルマラソン後のランナーの3人に1人は風邪をひく」や「優秀な自転車乗りは風邪をひきやすい」など、持久系スポーツや体重や体脂肪を調整するアスリートは

運動強度を上げる→免疫が低下する→運動を制限する

という負のスパイラルから抜け出せずにいます。意外にもトップアスリートの多くが感染症にかかりやすく健康的になれないのは運動強度と引き換えに免疫力を落としているからと言えます。ラグビーやレスリングなどのコンタクトスポーツでもヘルペスなどの皮膚感染症は皮膚免疫の低下が招いていると言えます。

この状況から抜け出すには「免疫」を暴走しないようにしながら向上させる必要がありますが、多くの難病が免疫に関連しているように、「免疫」コントロールは効果的な手段が個人ではありませんでした。

免疫が低下すると思わぬ所にも影響はあります、たとえば多くの細胞の修復は免疫がコントロールしています。その中でも筋肉(骨格筋)の増強修復には免疫細胞(Mφ)の活性が弱いと修復が長引く事が検証されました。LPSは今まで手つかずだった「免疫管理」の救世主で個人でも使え、今までのトレーニングメニューの変更を必要とせず、感染症などのアクシデントを減らしながら回復期間の短縮により従来より楽に強くなれる可能性を秘めています。

LPSの含まれる食品(食品から摂取する方法について)

天然の食材にLPSは含まれています。左表はLPS研究で有名な杣源一郎教授の著書「ガンも認知症も寄せ付けない免疫ビタミンのすごい力」から抜粋した表です。

この表の下には「大人1人LPSの1日の推奨摂取量は約500μgです」という記載があり、効率の良さそうなメカブの酢の物25gでも500÷64=7.8個ですから続けるには難しそうです。しかもアスリートが効果的に免疫を働かせるという意味では1500μg/日くらいをとりたいので食べ物からは効率がかなり悪いと考えられます。


効率的な摂取の組み合わせ

左のグラフはLPS研究を行っている自然免疫応用技研のデータの抜粋ですが、簡単に解説すると左側βグルカンは酵母やキノコの成分で右側ペプチドグリカンは乳酸菌の成分です。それら成分とLPS(糖脂質・IP-PA1)の比較でLPSは1/100~1/1000の少量で免疫をアップ出来るというグラフですが、驚く事にβグルカンやペプチドグリカンと同時摂取すると3倍の相乗効果が現れるというものです。(特許有り)


これは、LPSの免疫活性化の仕組みに関係していて、免疫細胞(Mφ)には10個のスイッチToll-like receptor)があり、LPSはTLR4というスイッチを入れます。 乳酸菌などはTLR2というスイッチを入れるため、同時に2つのスイッチが入る事による相乗効果です。つまり、LPSと乳酸菌を同時に食べる事で3倍の効果を発揮出来ます。

①感染症予防

健康になるはずが風邪をひく理由 (運動ストレス)

スポーツ科学で良く言われる「オープンウインドウ」は競技やトレーニングで強くなろうと運動強度を上げると血液中のリンパ球数が減るなどで、一時的に免疫力が低下し、ウイルス感染を容易にしてしまうというものです。

しかも、散歩レベルの運動では免疫は向上しますが、それを超えると免疫低下に移行するという研究が多く発表されています。

つまりスポーツは強くなる事と引き換えに感染症のリスクを避けられないという事です。事実オリンピック選手の多くが大会期間中に風邪の症状に悩まされたり、最も過酷と言われる自転車競技のツールドフランスでも昨年大会17日目に総合3位を走っていた選手が風邪の体調不良から棄権するという事態も珍しい事ではありません。その他にも、免疫の低下から皮膚感染症のヘルペスを発症するラグビーやレスリングなどのコンタクト系スポーツも問題視されています。

 スポーツによるものの原因は運動ストレスから発生していて、コルチゾールの増加やROS(活性酸素)がリンパ球DNAを破壊するなどの要因が論文発表されています。

「昨日の自分より強くなろう」、「ライバルのあの人よりも強くなろう」という意思が強いほど運動強度は上がり、免疫はさらに低下していくという矛盾が、「優秀な選手ほど風邪をひきやすい、体調を壊しやすい」という結果を招いています。(ウエイト調整を伴うなら免疫低下はもっと顕著になります)

LPSは運動ストレスにより低下した免疫細胞を活性化し、喉や鼻粘膜の抗菌物質(SIgAなど)の低下を抑え呼吸により進入してくるウイルスの繁殖を制御するとしてインフルエンザ予防剤のアジュバント(増強剤)など様々な活用方法が検討されています。

②筋肉増強・修復

慶應義塾大学グローバルCOEプログラムより引用


筋トレを行うと筋肉量が増え運動能力が向上しますが、筋肉が増えるメカニズムに免疫細胞(Mφ)が関与していることはあまり知られていません。簡単に言うと筋肉は細長い筒状の細胞(筋繊維)が束になる事で構成されています。筋トレを行うと損傷した筋肉を免疫細胞が修復に向かいます、筋繊維の周辺に定位している筋衛星細胞という休眠中の細胞がシグナルにより目覚める事により分裂増殖を始め、筋繊維に融合し筋繊維を増やしていきます。近年研究により筋衛星細胞が寿命を迎えず無限に分裂出来る仕組みも解き明かされましたが、筋肉が増えるメカニズムの中で、免疫細胞であるマクロファージは損傷部を分解除去するだけではなく、筋肉を増やす筋衛星細胞やコラーゲン堆積に関わりながらその炎症の鎮静化にも関わっている事が明らかになりました。

 

 筋肉を無理なく効率よく増やすためには、プロテインやクレアチンなどのエネルギー代謝サプリメントを上手に補いながら、細胞損傷修復+幹細胞活性化+炎症鎮静化を行うマクロファージが免疫活性のコントロールを併用するのが近道です。これからは筋力のパワーアップも免疫コントロールを併用する時代になっていくと思われます。

③皮膚&血管&末梢神経修復

スポーツに怪我はつきものですが、損傷した組織が回復するには立体的な方向や階層性を元通りに復元する必要があります。これら復元に免疫細胞(Mφ)が必要である事がAnne-Laure Cattinらの研究で 解ってきました

 

 右図は末梢神経が切断された場合の修復過程を示していますが、免疫細胞は低酸素状態をキャッチして集積し増殖因子を分泌することで血管を新生させ、血管からの酸素供給が始まると神経や周辺細胞が次々と増殖再結合されていきます。怪我の早い回復にも免疫細胞が重要な働きをになっているという事が解り始めました。

Macrophage-Induced Blood Vessels Guide Schwann Cell-Mediated Regeneration of Peripheral Nervesより引用


④花粉症の緩和:アレルギーを正常な状態に戻します。

白血球の中のリンパ球にはT細胞があり、自然免疫活性化物質LPSで免疫細胞の(Mφ)を活性化するとT細胞に対してアレルギーや花粉症を緩和するように伝達物質を分泌します。細胞性免疫(Th1)と体液性免疫(Th2)のバランスがTh2優位になっているとアレルギー体質になりやすく、LPSはこのバランスを正常に戻す事で花粉症やアレルギーを緩和すると言われています。(他の要因も指摘されています)


新型コロナウイルスとLPS成分について

新型コロナウイルス(2019-nCoV)により学校の休校、イベントの中止や通勤の分散、在宅勤務などが行われるようになりましたが不明瞭な情報が多く、対策方法が難しい状況となっております。

 

新型コロナウイルスについて厚生労働省の情報(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html)ではウイルスの詳細が明確になっていませんが過去の肺炎ウイルスMERSやSARSと類似していると考えられます。

 

LPS の作用によるコロナウイルスへの効果報告はまだ見当たりませんでしたので、ここではインフルエンザウイルス(コロナウイルスと同じ一本鎖 RNA ウイルスに属する)についての研究を紹介します。

 

東北大学医学部の報告(図2、注5)では、 H5N1 型インフルエンザ(いわゆる鳥インフルエンザ)に弱いマウスに対し、感染 3 日前に、LPS(1.25mg/kg)を鼻腔内に投与すると致死量のウイルスを感染させても著しい生存効果が得られることが示されています。

LPSを感染7日前投与した例でも生存効果が見られています(効果は弱まります)。メカニズムとしては、LPSが作用してⅠ型インターフェロン(抗ウイルスたんぱく質)が細胞から分泌され、抗ウイルス作用を示すとしています。

〇LPS が直接インフルエンザウイルスと結合すると、ウイルス粒子を不安定化させ、感染力が低下するという報告があります。(図3、注6)

 

〇日東電工と大阪大学のグループの報告(注7)では、LPS とインフルエンザウイルスワクチンをマウスの舌下に投与することでの鼻腔粘膜の IgA抗体価(ウイルスを排除する粘膜分泌物)を高める効果が見出されています。さらに、マウスでのインフルエンザ感染実験により LPS とインフルエンザワクチンの舌下投与で高い感染予防効果も確認されています。LPS による抗ウイルス作用もあったと思われます。

以上のことから、 ①LPSはウイルス粒子に直接的に結合して不活性化する働き、 ②免疫細胞に結合してⅠ型インターフェロンを誘導してウイルスを排除するはたらき、 ③抗原提示細胞を活性化して抗体(特に粘膜の IgA 抗体)の誘導を増強すること でウイルス侵入から守る働きが期待できます。

 

注5:J Virology, 2011, http://dx.doi.org/10.1128/JVI.06168-11

注6:mSphere, 2017,https://doi.org/10.1128/mSphere.00267-17

注7:PLoSONE 2015, 10(5): 10.1371 /journal.pone.0126849